『やめるだけで成果が上がる 仕事のムダとり図鑑』(岡田充弘 著、かんき出版)の冒頭には、どんな会社にもありがちなムダの例が挙げられています。
誰も発言せず、何も決まらない会議。
自分には関係のない情報まで送られてくるCC」のメール。
「PCでできるはずなのに……」と思いながら続けている手書き作業。 何度も同じことを説明させられるホウレンソウ。
立ち上げに何分もかかる会社支給のPC……。 (「はじめに」より)
たとえばこのように、オフィスにはいたるところに“ムダ”が潜んでいるものだということ。
でも、なぜ人はムダなことをやめられないのでしょうか?
個人の意思も影響しているのでしょうし、会社の体制に問題があるのかもしれません。
しかし、最も大きな原因は、「そもそも目の前にあるムダをムダと思っていない」ことにあるのではないかと著者。
いわば、身のまわりにはびこるムダに気づいていないということです。
そうした観点に基づき、本書では著者の考える“仕事のムダ”を70種ピックアップし、それらを取り除く方法を解説しています。
そのなかから第1章「意思疎通がラクになる! コミュニケーション編」に注目してみましょう。
人に頼んだ仕事が、いつもうやむやになる
人に仕事を頼んだのに、締め切りが近づいても音沙汰がないので「あれどうなってるの?」と尋ねてみたら、「○○の理由で遅れています」「まだ着手していません」「忘れてました」などの返事が返ってきたことはないでしょうか?
それどころか、「そんなこと聞いてません」という答えが返ってくることもあるかもしれません。
しかし、仕事上の「言った、言わない」は本当に不毛。そんな些細な行き違いで、積み上げてきた信頼関係が崩れてしまう場合もあります。
著者も会社を経営するようになってからは、会社員時代には考えられなかったようなコミュニケーショントラブルに何度も遭遇したそうです。
原因を探ると答えはシンプルで、こういった頼み事は、口約束が大半で、内容が記録されていないことにありました。(16ページより)
そのため、それに気づいてからは、他人との約束はどんな小さなことでも全て記録に残すようにしたのだといいます。
ちなみにさまざまな方法を試した結果、公式文書や契約書を除けば、メールがもっとも手軽で効果的だということがわかったのだとか。
そのため著者の会社では、社内の決定事項や承認、会社間のやりとりなどは、どんなに小さなことでも口頭だけで終わらせず、あとから関係者にメールを送って記録を残しているのだそうです。
メールで一括管理しておけば、検索機能を使った過去の情報を取り出すのも簡単。
なおSkypeやメッセンジャー、LINEなどは、一時的な意思疎通には便利であるものの、エビデンスとして情報を長期間記録するツールとしては検索性・閲覧性に欠けるといいます。
いずれにしても、いかに小さな出来事であっても、日ごろからデジタルなエビデンスを残しておくよう心がけるべきだということです。(16ページより)
人に仕事を頼めず、抱え込んでいる
忙しいのに人に仕事を頼めず、すべて自分で抱え込んでしまう人がいるものです。
しかし大量の仕事をすべて自分でやろうとすれば、アウトプットの質も下がり、残業も増えて当然。
残業続きで睡眠時間が削られれば、さらに生産性が下がり、また仕事がたまることになります。まさに悪循環そのもの。
たしかに他人に動いてもらうことは簡単ではないため、「頼むのが苦手」と感じる人がいてもおかしくはありません。
とはいえ、仕事のムダをなくして生産性を上げるには、“人に頼むスキル”を身につけることはとても重要。
事実、仕事を頼まれた人がその気になって、こちらの期待するタイミングと品質で成果を出してくれるかどうかは、「頼み方」ひとつで変わってくるのだとか。
ちなみに著者はいろいろなタイプの人と仕事をするなかで、相手に行動を促すには一定のコツがあることに気づいたのだそうです。
① 仕事を小分けにして依頼する
事務処理は調整仕事など、気乗りしない仕事は誰にでもあるもの。
そういった仕事を依頼された人は、なかなか一歩を踏み出せなかったりするということです。
著者によれば、そういった仕事を依頼するときのコツは「とにかく短く小さく」。
事務処理など手間のかかる仕事は、一気に複数ではなく、簡単なものをひとつずつ依頼するということ。
利害関係が難しい人的案件であれば、簡単な伝達事項だけを依頼する。
長期に渡るタスクなら、できるだけ小さく分解し、こまめにレポートしてもらう、というように細分化するわけです。
そうやって少しずつペースを作っていくと、次第にリズムよく回り始めるといいます。
② ネックとなる障壁を一気に取り除く
人が動いてくれない理由はさまざまですが、なかには他の仕事との兼ね合いや、プライベートの事情など、ひとりではどうしようもできない状況もあるはず。
そんなときに大切なのは、一緒になって障壁を取り除く手伝いをしたり、腰を据えてしっかり相談に乗ること。
その結果、障壁が完全に取り除けなかったとしても、信頼関係は高まります。
すると、以後は機転を利かせてくれるようになったり、やる気が増すなど、思いもよらないプラスの効果が期待できるといいます。
③ 相手のレベルに合わせて仕事の難易度を調整する
人は万能ではないため、頼まれるほうにも苦手な仕事はあることでしょう。
そのため人に仕事を頼むときは、相手の能力を見極めたうえで、「難易度を落とす」「できる範囲に絞って依頼する」といった手段も有効。
とくに相手が部下の場合は、少しずつ苦手な仕事を頼むようにすれば、自信をつけてもらいやすくなるそうです。
徐々に依頼の範囲を広げ、要求水準を高めていくと、脱落することも少なくなるわけです。
人に頼むのが苦手だったり、人を動かすのが得ではない人がまずすべきは、より意識的に相手を観察すること。
そしてそのうえで、リマインドやフォローを心がけていくと、これまでとは違った結果になってくるはずだといいます。(18ページより)
著者は、“ムダとり”によって破産寸前の会社を再生させた実績の持ち主。つまり本書の内容は、そうした実績に裏づけされたものなのです。
そのため、数々のメソッドはどのような会社でも応用できるはず。
仕事のムダを排除するために、参考にしてみてはいかがでしょうか?
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Photo: 印南敦史
Source: かんき出版
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March 31, 2020 at 05:32AM
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