環境制御システムがバラの生育に適した条件を年間を通じ維持する=玉井良幸撮影
巨大な体育館のような温室は春の陽気に包まれていた。高さ7メートルのガラスの天井に向かって、大輪のバラが伸びる。植物にも人にも心地いい環境で、雨どいのような細長いプランターにヤシ殻の培地をはめ込む作業が進む。
切り花生産のクニエダ(滋賀県守山市)が3年前に開設した世界最先端の植物工場。常春の揺りかごで深紅のアマダ、白いアバランチェなど、20種類近いバラを育てる。
バラ栽培53年、会長の国枝武夫さんが先進地オランダから学び、日本仕様に結実させた温室には2つの技が詰まっている。品質の安定と生産性の向上だ。
「作物には4月の気候が一番いい」。国枝さんはいう。夏の高温多湿、冬の底冷えをしのぎ、年間を通じて温度と湿度、日照時間を維持する。天井の高さはオランダより1~2メートル、日本の従来の温室より3~4メートル高い。広い空間にして温度の急変を避けるためだ。通常は18度、夏の日中でも28度以下に自動的に制御する。暑ければ日よけで遮り、発光ダイオード(LED)ライトで日照を補う。
温室は幅100メートル、奥行き180メートルある。棒状の鉄材で組んだ長さ93メートルのベンチが84列並ぶ。ベンチの下には直径80センチほどのダクトが通り、温度を調整した空気を隙間から漏れ出させる。ベンチの基部や壁面には温水を流すパイプを張り巡らせ、冬場の冷気を遮る。
ベンチの基部にある温水パイプは作業台のレールも兼ねる。作業者の身長に合わせて高さを調整し、ベンチに沿って移動しながら手入れや収穫ができる。
バラを植え付けるヤシ殻の培地はオランダの専門業者に特別仕様で発注している。1株ごとに給水チューブがつながれ、自動的に水や養分を供給する。作業者の勘や経験に頼らずに管理できるという。
日本の消費者は移り気だ。新しい品種を絶えず取り入れ、多品種を用意して対応する。植え付けから2カ月半から3カ月で最初の収穫、以後は6週間ごとに繰り返す。年8回収穫できる。面積あたりの収穫量は日本の旧来型温室の2~3倍になるという。
国内の花きの生産農家は個人経営がほとんどで、大規模な栽培に取り組む海外勢と生産性に開きがある。さらに新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけた。宴会やパーティーの自粛で業務用の需要がしぼみ、出荷価格は1年前の半値にある。このままでは日本のバラ農家がなくなるという危機感が強まる。
今、取り組んでいるのは食べても安心なバラの栽培だ。温室全体を殺菌するなどして、農薬を使わない方法を探る。料理へのアレンジや浴槽に浮かべるなど、付加価値の高い新たな使い方が広がる可能性がある。
長年の研さんは今春、旭日単光章の受章でも報いられた。「日本で花き農家が生き残るためのビジネスモデルを示したい」と国枝さん。究めても新たなゴールが現れる。バラ名人の技を追求する情熱は枯れない。
(木下修臣)
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June 08, 2020 at 12:01AM
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