新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オンライン会議を導入した企業は少なくない。離れた相手とやり取りできる利便性の一方、会話のリズムがはかりにくいことなどから、苦手意識を持つ人もいる。専門家は「オンラインは対面とは異なるコミュニケーション。経験に基づく手法が適用できないため最初はストレスになるが、慣れればスキルを身につけられる」とする。(藤井沙織)
「意見を挟むタイミングがつかみにくく、参加者が順に発言するだけで、あまり議論が盛り上がらない」
大阪府内の40代の女性会社員は、新型コロナの影響で初めて経験したオンライン会議について困惑した様子で話す。自身が「議長」の立場で臨むこともあるが、「画面越しでは誰が話をしたがっているか分からない。空気が読めないのでやりにくい」という。
外出自粛や在宅勤務が求められる中で、テレビ会議アプリを使ったオンライン会議の導入は加速した。だが、慣れない環境に戸惑う声もあり、週数回はオンライン会議に参加するという兵庫県の団体役員の男性(46)も「発言が重なると、どちらの声も聞き取れなくなる。タイムラグもありコミュニケーションがとりにくい」と話す。SNS(会員制交流サイト)でもオンライン会議にストレスを感じるとの声が投稿され、「自分を含む参加者の顔が画面に映っているのが耐えられない」という嘆きもある。
なぜ、オンラインだとコミュニケーションに違和感を覚えるのか。近畿大の大対(おおつい)香奈子准教授(応用行動分析学)によると、人は対面で話す際、「相手の細かな表情の変化や視線、姿勢などいろんな情報から空気を読んでいる」という。だが、オンライン会議では相手の姿は見えるが情報量は限定され、目を合わせることもできない。このため「発言のタイミングなど、対面で経験してきたやり方が適用できないところがある」と分析。自分の顔が画面に映ることも、「今までは発言したときにのみ他の参加者から視線を向けられていたのが、常に見られる状態にあるために心理的な圧力を感じてしまう」と指摘する。
従来とは異なるコミュニケーション形態のため、「議論を深めるには工夫が必要だ」と大対准教授は強調。例えば、チャット機能でいつでも意見を出していいと周知しておけば、参加者が発言のタイミングを逃すこともない。また、対面の場合は目で賛意を伝えるなど、発言しなくても一定の「参加した感」が得られるが、「オンラインは発言しないと『本当にただ聞くだけ』になる。今まで以上に言葉を交わさないと、参加意識がどんどん薄れていく」とも。発言していない人に話を振るなど、議長の積極的な働きかけも重要だという。
緊急事態宣言は全面解除されたが、各企業などでのオンライン会議の活用は今後も続くとみられる。大対准教授は「人は変化に対してストレスを感じる。急激なオンライン化で今は疲れを感じても、慣れれば適したスキルを身に付けられるのではないか」と話している。
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June 07, 2020 at 06:54AM
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