社内コミュニケーションに悩む会社は多い。多様な働き方の人が組織内にいることが当たり前になり、「阿吽の呼吸」が通用しなくなった。さらにはコロナ禍でリモートワークが導入され、オンラインでメンバーとうまく意思疎通ができず悩む人も多いのではないだろうか。
株式会社ミクシィでは、10年以上前から社内コミュニケーション推進に力を入れている。企業のミッションでも「フォー・コミュニケーション」を掲げ、今では当たり前の風土として社内コミュニケーションが根付くまでに至ったミクシィの取り組みから、社内コミュニケーション活性化のポイントを探る。
いま、社内コミュニケーションに注目が集まっている
仕事を円滑に進めて成果を出すためには、社内コミュニケーションが不可欠だ。仕事はひとりでできるものではなく、上司や同僚と協力して成果を出すことを目指すものだからである。
多くの会社が悩みを抱える社内コミュニケーション
社内コミュニケーションは自然に活発になることはない。日々のタスクに追われるあまり、以下のような状況に陥ってしまうことがある。
- 上司と部下の会話が、タスクの指示と確認ばかりになってしまう
- 身近な数名の同僚としか話をしない状態になってしまう
- 部門間の対立がしばしば起こる
今年は新型コロナウイルス感染症の影響で、急遽リモートワークを始めた会社も多い。オンラインで円滑なコミュニケーションを取ることの難しさを感じる人も多いのではないだろうか。独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査では、従業員の退職理由の上位に「社内の人間関係」が入っており、社内コミュニケーションは働く人にとって重要な要素であるといえる。
多くの会社で悩みが深まる中、株式会社ミクシィではコロナ禍のはるか以前から社内コミュニケーションを推進している。今回はその取り組み内容を伺った。
ミクシィの社内コミュニケーション推進策とは
株式会社ミクシィは1997年に開始した求人情報サイトが始まりだ。その後、SNSサービスの「mixi」が大ヒットし、現在はデジタルエンターテインメント、スポーツ、ライフスタイルの3事業を柱としている。
企業のミッションに「フォー・コミュニケーション」を掲げ、自らを「コミュニケーション創出カンパニー」と位置付ける同社では、長きにわたり社内コミュニケーションを重要視した組織運営を行っている。
社内コミュニケーション推進の鍵は、当事者任せにしないこと
社内コミュニケーション推進の内容について、執行役員 人事本部長の柳本修平氏に伺った。
ーーミクシィでは、長年に渡って社内コミュニケーション推進に取り組んでいると伺っています。
柳本:そうですね。代表的な取り組みである1on1は、2007年ごろ自然発生的に現場で始まりました。当時はSNSの「mixi」が成長中で、会社も大きな変化の時を迎えていました。社員も300名ほどになり組織の規模が急拡大し、平均年齢も28歳という若い組織になっていたのです。
社歴が浅いメンバーばかりで、一人ひとりとじっくり話し合わなければならないという各現場リーダーの問題意識が、1on1の自然発生に繋がったと考えています。
実は、1on1は昔も今も「やりなさい」というルールはありません。社員の自主性に任せながらも、人事としては1on1の時に話す内容や実施頻度などを共有する場を設けたり、マネジメント向けの勉強会をしたりするサポートを積極的に行なっています。
ーー現在はどのような組織を目指して社内コミュニケーションを推進していますか?
柳本:さまざまな事業に関わる人がシナジーを生み、社員同士が協力しあえる会社作りを目指しています。そのために、縦のコミュニケーションと横のコミュニケーションの両方を活発にするための取り組みをしています。
まずは縦のコミュニケーション。レポートラインにおいて戦略や目標が正しく伝達され、成果を出すことです。1on1はこのための取り組みです。
横のコミュニケーションは、事業部間連携ですね。サークル・コミュニティへの支援をするなどして、偶発的な繋がりが生まれるきっかけ作りをあの手この手で行なっています。
近年はスマホアプリ「モンスターストライク」が大ヒットし、社員数は1,000名規模になりました。社員同士の理解を深め、本音で話し合える関係を築くための社内コミュニケーション推進はこれからも重要なテーマです。
ーーリモートワークにおける社内コミュニケーション推進策はありますか?
柳本:オンラインとオフラインをうまく使い分ける会社でありたいと考え、いくつか施策を行なっています。
1on1はリモートワークでも続けており、実施する際のコツやヒントを人事からマネジメント層へ共有しました。オンラインでの1on1に戸惑っている人が多かったので、「明るい部屋でやりましょう」「普段よりゆっくり話しましょう」「文節を短めに話しましょう」など、極めて具体的な内容にしました。社員からは「具体的だとそのまま取り組みやすい」と好評です。
オンラインでの効果的なオンボーディング(新入社員の受け入れ〜早期に活躍してもらうためのサポート)も、今取り組んでいるテーマです。
コミュニケーションは2人以上が関わることですので、当事者にすべて任せるのではなく、ある程度は共通の方針があったほうがいいと考えています。
ーー社内コミュニケーションを推進することで、事業や離職などへの影響は?
柳本:事業領域は広がり続け、従業員数も増え続けています。離職率は低く、ミクシィで長く働く社員が多いですね。実は業界内では珍しいことなんです。
コミュニケーションを重視し、信頼関係を築く部門運営
次に、ミクシィのマネジメント層はどのようにコミュニケーションを重視しているのか、経理財務部長の鈴木優子氏に伺った。
ーー経理・財務といえばバックオフィスにおけるスペシャリスト集団です。高い専門性を発揮するだけでなく、なぜコミュニケーションも重視したいと考えたのですか?
鈴木:部門のメンバーには、専門性という武器を持ちながら、周りの人たちと助け合える経理人材であってほしいと思っているからです。会計士・税理士と現場の橋渡し役になることが会社の経理の役割だと考えています。
ーー具体的には、どのような部門運営を行なっていますか?
鈴木:マネージャーとの1on1や部の定例会を開催している他、空いた時間にオフィスを意識的にうろうろしてメンバーに話しかけています。雑談することもありますし、「やってくれて助かるよ」と感謝の言葉を伝えることもありますね。
自分がメンバーとして働いているとき、上司がきちんと自分を見てくれていることを感じるのが嬉しかったんです。その気持ちを忘れず、メンバーに一言でも声をかけることを心がけています。
ーーどのようなマネジメントを目指していますか?
鈴木:相手を信頼して任せるスタンスをとり、細かいことは聞かないようしています。
私自身、厳しい上司のもとで猛烈に働いていた時代がありました。そういう経験を経て、「皆が自分らしく働く、楽しい職場にしたい」と強く思ったんです。
また、部長の打診をいただいたときに「私にできるのかな?」とも思いましたが、自分には足りない部分もあるのだからメンバーに助けてもらおうと考え直したことも影響しています。
コミュニケーションをしっかり取ることで、お互いに信頼できて楽しく働ける職場作りを目指しています。
ーーバックオフィスとして「フォー・コミュニケーション」にどのように貢献していますか?
鈴木:経理部門にとってのユーザーは、事業を行っている各部署の現場メンバーや意思決定をする取締役会、そして両者の先にいるステークホルダーです。現場メンバーや役員と直接コミュニケーションを取りながら、求められていることをいち早くキャッチアップし、サポートすることを心がけています。これがバックオフィスとしての「フォー・コミュニケーション」の実践、価値の発揮であると考えています。
また、私個人も社員や役員とのコミュニケーションの質を高めるために、今年、産業カウンセラーの資格を取得しました。傾聴のスキルを磨くことで身に付いた相手を尊重する考え方をさまざまな方とのより良いコミュニケーションに繋げて、部全体の成果向上を目指していきたいと考えています。
1on1では、上司の考えを押し付けない
今でこそ多くの企業が実施している1on1を、ミクシィでは2007年頃から行なっている。1on1の社内アンケートを実施したところ、部下からの評価が高かったマネジメント層のひとりが、デジタルエンターテインメント事業本部マーケティングインテリジェンスグループ マネージャーの片瀬大氏だ。片瀬氏に、効果的な1on1のポイントを伺った。
ーー1on1をどのような場にしたいと考えていますか?
片瀬:メンバーの目標達成に向けた手段のひとつと考えています。私のグループでは、常にストレッチした目標を設定します。そのため、既存の延長で仕事をやっていても目標達成できません。
メンバーにはまず1on1の位置付けを理解してもらい、心理的安全性を作ることを心がけています。そのうえで、目標達成に向けた自分の改善点を「自分ごと」として捉え、納得してもらえる場を目指しています。
ーー1on1を実施するとき、どのようなことに気をつけていますか?
片瀬:こちらの考えを押し付けないことです。一方的に言われるだけでは、本人は納得しませんし、目標達成にも繋がりません。
ーーメンバーとは具体的にどのような話をしていますか?
片瀬:若手のメンバーには先週の仕事で良かった点、悪かった点をまず聞きます。悪かった点はなぜそうなったのか、そして何を変えていくかを次に話す流れです。メンバー自身に考えが浮かばないようであれば、自分の事例を話すこともありますね。
リーダークラスとの1on1では、こちらから問いかけるのではなくディスカッションをしています。組織をどうすべきかの話が多いですね。リーダーともなると視座が上がっていますし、組織への意見もあるので行動に繋げてほしいという意図です。
組織をよくするためのアイデアをもらったら、私の上司にも伝えてアイデアを実行することもあります。
ーーオンラインでの1on1で留意していることはありますか。
片瀬:対面での1on1よりも綿密に話すようにしています。
リモートワーク中心の働き方になり、新たな課題が出てきたと感じています。つい働きすぎてしまうなど、家で働くストレスが多いですね。
また、リモートワークだと他人の様子が見えないので、メンバーは自分がやっていることが正しいのか不安に思うことが多くあるようです。目標に対してきちんと進捗しているのかについて、じっくり話し合うようにしています。
以前より1on1の時間はかかりますが、今は必要な時間だと捉えています。
ミクシィの取り組みに学ぶ、社内コミュニケーション推進のポイントとは
ミクシィのように、社内コミュニケーションを風土として根付かせる秘訣は何なのだろうか。インタビューから3つのポイントを挙げたいと思う。
ポイント①:社内コミュニケーション推進の目的を明確にする
社内コミュニケーションは、あくまで目的に対する手段である。活性化したほうがいいだろうと漠然と考えているだけでは、活発な社内コミュニケーションを実現させることは難しい。
ミクシィは「さまざまな事業に関わる人どうしがシナジーを生み、社員同士が協力しあえる会社作り」を目指している。さらに部門ごと、施策ごとにコミュニケーションの目的を明確に定めている。これが成果を上げる秘訣のひとつだ。
ポイント②:現場任せにせず、具体的な支援をする
ミクシィの人事部から全社へ発信した1on1のtipsは、極めて具体的な内容だった。
社内コミュニケーションを風土として根付かせるためには、社員が何をすればいいのか迷わないよう、具体的な行動レベルで方針を出すことも重要である。実行面でも現場任せにせず、会社が必要な支援をすることが定着への第一歩だ。
ポイント③:コミュニケーションは信頼関係とセット
コミュニケーションの量を増やすだけでなく、お互いの信頼関係構築も重要だ。そのためには、上司から先に心を開いて接することがポイントとなる。
管理職である鈴木氏や片瀬氏は、自分から部下に気軽に話しかけたり、自分の経験を事例として話したりするなど、小さな工夫を積み重ねて信頼関係の醸成に努めている。
社内コミュニケーションが単なる情報共有になってしまっては仕事の成果に繋がりにくい。上司が主導しながらお互いを信頼できる関係も築いてこそ、高い成果を上げられるのだ。
まとめ:社内コミュニケーションによって会社も個人も成長を目指そう
ミクシィは事業領域を広げ続け、従業員数は1,000名を超えるまでに成長した。離職率が低い同社において、社員一人ひとりが成長し続けた結果、現在の成長に結びついているのだろう。
その原動力のひとつである社内コミュニケーションは、綿密な推進施策をで取ってこそ風土として根付く。ただし一朝一夕に実現するものではないので、粘り強く推進し続ける姿勢も重要だ。
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成(若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)」
インタビュイープロフィール
柳本修平(やなもと しゅうへい)
執行役員 人事本部長
株式会社NTTドコモを経て、2008年5月株式会社ミクシィに入社。SNS mixiのサービス企画、経営企画、アドテクスタジオなどを経験後、2015年10月よりXFLAGスタジオにてWeb広告の出稿、デジタルマーケティングを担当。2016年7月XFLAGスタジオ本部 人事戦略室の室長に就任。
2018年4月、当社執行役員人事領域担当。2020年4月 執行役員 人事本部長就任(現任)。
鈴木優子(すずき ゆうこ)
経営企画本部 経理財務部 部長
IT ベンチャー、人材支援企業で経理業務を担当し、2008年10月ミクシィ入社。経理グループに配属。以降、単体決算の他、連結決算、開示書類の作成、株主総会準備(計算書類等の作成)、内部統制、税務調査や子会社取得後の経理財務周りのPMIなど、経理財務業務全般を担当。2011年にリーダー、 2012年にマネージャー、2018年10月より経理財務部長に就任。
片瀬大(かたせ おおき)
デジタルエンターテインメント事業本部 事業企画部 マーケティングインテリジェンスグループ マネージャー
マーケティングリサーチコンサルタントとしてリサーチ設計・分析・クライアント提案に従事。イギリスへ留学しマーケティング・マネジメントの修士号を取得後、IT企業を経て、DeNAにてリサーチチームの再生からスタートし、新規・既存事業の定量・定性分析に従事。2018年10月にミクシィへ入社。デジタルエンターテインメント事業本部において、新規事業のマーケティング業務を担うマーケティングインテリジェンスグループを立ち上げ、マネージャーとして従事。
株式会社ミクシィについて
1997年創業。求人サイトサービスから始まり、現在は、デジタルエンターテインメント、スポーツ、ライフスタイルの3事業を展開する。自らを「コミュニケーション創出カンパニー」と位置付け、友達や家族など近しい人間関係の人とのコミュニケーションを豊かにするサービスを幅広く展開。「フォー・コミュニケーション」をミッションに掲げ、社内のコミュニケーション活性化も長きにわたり推進している。
公式HP:株式会社ミクシィ
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この記事を書いたライター
人材業界で10年以上働きながら、ライターとしても活動する就職氷河期世代。翻訳書出版の経験も持つ。現在の執筆テーマは、社会人のキャリアやスキルアップ、女性の生き方など。趣味は飲酒しながらの料理。
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