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社会的距離のファッション史 あの「巨大なスカート」の意外な役割 | 避けたいのはウイルスでなく「男の目」 - courrier.jp

クリノリンスカートを履く女性のために、ゲートを開けてもらうよう男性に頼む紳士 Photo: Hulton Archive / Getty Images

クリノリンスカートを履く女性のために、ゲートを開けてもらうよう男性に頼む紳士 Photo: Hulton Archive / Getty Images

感染症の拡散を防ぐために他者から距離を取る「社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)」は誰もが知る言葉となった。あえて人と物理的に離れるこの行為は一見すると新しいトレンドに思えるが、実はビクトリア時代の女性たちはファッションによって「自動的」に社会的距離を保っていたという。

The Conversation

「社会的距離」を取る手段は千差万別


新型コロナウイルスの感染爆発に対する世界の取り組みが進むなか、「社会的距離」がバズワードとなっている。

食糧を備蓄し、患者を早急に病院へ収容する代わりに、人と人とが物理的に離れる社会的距離をとることを当局は提唱しているのだ。これがウイルスの広がりを抑え、蔓延を食い止めるもっとも有効な手段なのだという。

社会的距離を考えるとき、ファッションと関連性があると思う人は少ないかもしれない。しかし私は「衣服が政治や文化に及ぼす影響」に詳しい歴史家だ。社会的距離を取る行為において、ファッションの果たす重要な役割を理解している。

歴史を見ると、衣類は密接性と不要な露出を減らす有効な手段としてその役割を果たしてきた。たとえばいまの危機の最中、マスクは「近づくな」という意思を示すファッションアクセサリーになっている。

あるいはかつてペストが流行したとき、医者が罹患した患者と距離を取る手段として、鳥のようなマスクを身に着けた。ファッションはそのときから利便性のあるものと証明されていたのだ。また過去には、服にハートマークをつけ、さらにベルを携えることで他者に「自分の存在を警告する」ことを強いられたハンセン病患者もいた。

疫病の際に医師がつけていたマスク

疫病の際に医師がつけていたマスク
Photo: Dea Picture Library / De Agostini / Getty Images


だが、他者と距離を保ちたいと人に思わせるのはパンデミックに限らない。

過去には、人と距離を保つこと──特に性別や階級、人種の差において距離を取ることは、社交の場や公共の生活において重要事項だった。社会的距離をおくことは、健康とは何ら関係なかったのだ。あくまでエチケットと階級の問題だったのである。ファッションは、それらを守るうえで最適なツールだった。


距離は身分を示すもの


ビクトリア時代の「クリノリン」(針金などを輪状にして重ねた骨組みを使ったスカート)を見てみよう。これは19世紀半ばに流行したボリュームのあるスカートで、当時の社会環境において異性とのあいだに“壁”を設けるのに役立った。
クリノリンを身につける女性

クリノリンを身につける女性
Photo: Fine Art Images / Heritage Images / Getty Images


起源を15世紀のスペイン宮廷に持つこの大きなスカートだが、18世紀には階級を示すしるしとなる。

家事などをせずとも良い、高位な特権階級の者だけが着ることを許されたファッションアイテムだったのだ。これは、大きなスカートを身に着けていても快適に移動できるほど充分なスペースのある家と、着るのを手伝ってくれる使用人がいることを示したのである。そして高位の者ほどそのスカートは大きくなった。

クリノリンを着るには周囲の手が必要だった

クリノリンを着るには周囲の手が必要だった
Photo: London Stereoscopic Company / Getty Images


1850年代から1860年代に「ケージ・フープスカート」の量産が始まると中産階級の女性もクリノリンを着用しはじめ、ファッション界を席巻する。

「大きなフープスカートは女性の移動性と自由を抑圧するものだ」との批判もあったが、実は、これが女性を守るのに役立っていた。クリノリンは女性の身体、そして襟からのぞく胸元を、未来のパートナー(そして最悪の場合、まったくの他人)から安全な距離まで遠ざけたのだ。

またこうしたスカートは、恐らく天然痘やコレラが発生した際も感染の危険を軽減するのに役立っただろう。しかし一方で、クリノリンは健康被害にもつながった。スカートに火が燃え移り、火傷で死亡した女性も大勢いたのだ。

1870年代になるとクリノリンに代わってバスルが流行り、スカートの後身頃の膨らみが強調される程度となった。

バスルを着る女性
Photo: Transcendental Graphics / Getty Images


パンデミックから新たなファッションは生まれるか?


そうした歴史もあるが、女性はやはり男性の不躾な目線を避ける武器としてファッションを使い続けた。

1890年代から1900年代初頭にかけ、スカートがタイトになると、今度は大きな帽子が出現したのだ。ここで重要なのは、帽子を留めるための鋭い金属製の針「ハットピン」である。これはかつてのクリノリンのように、異性による「嫌がらせ」から身を守る術を女性たちに与えた。

健康維持に関して言えば、細菌の理論と衛生に対する理解が深まったことで、スペインかぜの流行時にはマスクが普及した(現在のマスクとよく似ているものだ)。言い寄ってくる異性から身を守る必要はまだまだあったが、帽子は他者を遠ざけるためよりも、どちらかといえばマスクを傷や汚れから守るために使われていたようだ。

今回の新型コロナウイルスにより、新たなスタイルやアクセサリーが出現するかはまだわからない。だが、中国の企業が開発した「ウェアラブル・シールド」のような、新しい形の保護アウターは目にすることになるだろう。

とはいえ、私たちはいまのところ、家の中でパジャマを着たままでいる可能性がもっとも高そうだ。


Einav Rabinovitch-Fox, Visiting Assistant Professor, Case Western Reserve University.
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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April 20, 2020 at 04:30AM
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