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解禁されたレベル3、自動運行装置の作動データの保存ルールは?(深掘り!自動運転×データ 第24回) - 自動運転ラボ

改正道路交通法とともに改正道路運送車両法が2020年4月1日に施行され、名実ともに自動運転レベル3が解禁された。自動運転システムを指す「自動運行装置」やシステムの作動状況を記録する「作動状態記録装置」の位置付けが明確となり、これらの装置に求められる保安基準も合わせて改正された。

自動車においては、各システムの作動状況を検知する自己診断機能「OBD(オン・ボード・ダイアグノーシス)」や、事故時の状況を記録する「EDR(イベント・データ・レコーダー)」などがすでに実用化されているが、自動運転車に求められる作動状態記録装置はどのようなものか。

保安基準の細目に目を通し、義務化される作動状態記録装置に求められる要件について解説していこう。

■自動運転レベル3の解禁の今回の告示

道路運送車両法の改正により、保安基準対象装置に自動運行装置が追加されたほか、自動運行装置の作動状態の確認に必要な情報を記録する作動状態記録装置も設置が義務付けられた。

この自動運行装置や作動状態記録装置に求められる要件を新たに規定した保安基準は2020年3月31日に告示され、道路運送車両法とともに2020年4月1日に施行された。

保安基準の細目として、自動運行装置における走行環境条件内外での安全性能やドライバーモニタリング機能などに関する要件をはじめ、作動状態記録装置やサイバーセキュリティシステム、プログラムの更新などの際における改変システムに求められる各技術基準が新たに規定されている。

【参考】保安基準の改正については「自動運転車の「安全基準」を徹底解説!国交省、ステッカーデザインも策定」も参照。

■作動状態記録装置の技術基準
保存されるべきデータは?

作動状態記録装置には、以下を特定できる情報の保存が求められている。

①自動運行装置の作動状況が別の状況に変化した時刻
②自動運行装置による引継ぎ要求が発せられた時刻
③自動運行装置がリスク最小化制御を開始した時刻
④自動運行装置の作動中に運転者が、かじ取装置又は制動装置若しくは加速装置の操作装置への操作によりオーバーライドした時刻
⑤運転者が対応可能でない状態となった時刻
⑥自動運行装置が故障のおそれのある状態となった時刻

①は、自動運行装置による自動運転と手動運転との切り替えを指しているものと思われるが、細かな作動状況の変化を含む可能性もありそうだ。②は、自動運転中にシステムがODDを外れる可能性を察知し、ドライバーに対して手動運転への切り替えを要求した時刻を指す。

③は、②の引き継ぎ要求の後にドライバーの反応がない場合や対応が遅れた際などに、自動的に速度を低下させるなど交通上のリスクを最小限に抑える制御を行った時刻を指す。④は、自動運転中、任意のタイミングまたは②の引継ぎ要求後などに手動運転に切り替えた時刻を指す。

⑤は、②の引継ぎ要求後に一切の反応がないなど、再三の警告にも従わず手動による制御が行われず、ドライバーに不慮の事態が発生したとシステムが判断した時刻を指す。

これら一連の時刻を逐次記録することにより、ドライバーが速やかに引き継ぎ要求に応じているかが明確となる。また、ドライブレコーダーなど走行状況や走行時の環境状況を記録する装置と連動させることで、事故時などに自動運行装置が正確な判断を下していたかなども明らかにすることができる。

記録項目については、これまでの国際議論を踏まえ国際的に合意が得られているものについて規定した模様で、今後、国際的な議論の動向や技術開発の状況などを踏まえ、新たな国際基準が成立した際には速やかに国内基準に導入することを予定しているようだ。

データ形式や保存期間は?

データ形式に関しては、上記①~⑥について各データ要素と他のデータ要素に混同を生じさせることなく認識されるものでなければならないと定められている。特段、ファイル形式などを限定する定めはないようだ。

データの保存期間は「6カ月間」または「①~⑥の情報を2500回記録するまでの間」のいずれか短い方と定めている。なお、作動状態記録装置のデータ保存量が記録容量に達した場合は、追加データを保存するため最も早く保存されたデータを消去してもよいとしている。これは、6カ月間または2500回の記録が担保される限り、上書き方式で記録してよいことを意味する。

その他の重要な点

データは、市販されている手段または電子通信インターフェースによって取得できなければならず、車載の主要電源が利用できない場合や、事故など衝撃を受けた後においても、時刻を伴うデータは作動状態記録装置から取得できなければならないと定められている。

また、保存されたデータの改ざんを防止する適切な措置も講じる必要がある。ストレージそのもののセキュリティ機能や耐久性とともに、飛行機のブラックボックスのように、あらゆる衝撃からデータを守る策を講じる必要もありそうだ。

自動運転作動時以外のデータは任意で記録

データの記録は、基本的に自動運行装置の作動中とその前後を保存すればよいこととなるが、これは事故や故障など有事の際に原因を突き止めるために義務化されたものだ。自動運行装置の作動に合わせ記録する装置があれば基準を満たすことができるが、現実的には、自動運転システムを開発する各企業は手動運転時のデータも随時収集する可能性が高い。

各車両が生成する膨大な量のデータは、いわば宝の山だ。各種データを収集・解析することで、コネクテッドサービスや自動運転システムの検証・高度化をいっそう推進していくことが可能になる。

自動運転システムを搭載した各車両には、今後、高速通信を可能とする車載通信機(DCM)とともに、大容量かつ高速処理が可能なストレージも必須装備となりそうだ。

■【まとめ】データを基に責任の所在を判断する時代に

保安基準に定められた作動状態記録装置は、あくまで自動運行装置の作動状況を時刻を基準に記録するもので、事故の状況そのものを記録するわけではない。

自動運転レベル3は事故時の責任の所在が自動運転システムとドライバーで混在することになり、行政法、刑法、民法の各法上における責任の在り方も考慮すると、判断基準はより複雑化することが想定される。

今後、レベル3の社会実装とともに、責任の所在に関し各法上で判断を下すためにどのような情報が必要となるかがより精査されることになる。適時保安基準も改正され、作動状態記録装置に保存すべきデータ内容が増加するとともに、事故の際により多くの情報を残せるEDRなどの開発・製品化が進むことも間違いなさそうだ。

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